第59回春高祭の前日に芝山努さん(高11回)が講演

[ 寄稿者:山森 一幸(高27回)]

演壇上の芝山努さん

演壇上の芝山努さん

毎年春高は春高祭の前日に、オープニングセレモニーと称して著名人の方をお呼びし、生徒と保護者を対象とした講演会を開催しています。今年は春高卒業生の著名なアニメ監督・演出家である芝山努さん(高11回)をお呼びしました。去年(片桐仁さん)に引き続き、同窓会Web担当者の私が取材いたしました。

あいにくアニメ等には不案内の私は、芝山さんが日本のアニメ史上においてどれほど大きな足跡を残された方なのかを存じ上げず、お話をお聴きして、また作品名をお聞きして初めて、こんな偉大な方が先輩だったのかと思い知りました。


壇上の芝山さんと、スライド操作担当の春高生

壇上の芝山さんと、スライド操作担当の春高生

講演前に私は芝山さんと少しお話をしたのですが、その際私がついつい癖で「芝山先生…」と口にするとすぐさま、「先生はやめてくださいよぉ〜」とにこやかに言われました。なんと穏やかな優しい雰囲気を持った方なのでしょう。自分を決して大きく見せず、ありのままの姿で永年切磋琢磨し、その卓越した能力で一時代を築いた作り手としての魅力が伝わってきました。


体育館を埋め尽くした春高生とその保護者たち

体育館を埋め尽くした春高生とその保護者たち

芝山さんは1941年浅草生まれ。ご実家は四代続いた三味線の部品を扱うお店で、戦災に遭われたため埼玉に引っ越されたそうです。春日部高校のあと明治大学文学部演劇学科に進学され、卒業後は東映動画に入社してアニメ作家の道を歩き始めました。同期には宮崎駿氏、林静一氏がいるそうです。当時を振り返ると、決して今ほど花形の職業ではなく、皆が皆、落ちこぼれの人たちのようだったとおっしゃっていました。


以下が芝山さんの簡単な歴史年表です。

  • 1963年:長編アニメ映画「わんわん忠臣蔵」で動画デビュー
  • 1966年:Aプロダクション(後にシンエイ動画に改称)に移籍
    「ムーミン」や「ど根性ガエル」など数々の名作の演出・監督を務める
  • 1978年:シンエイ動画を退社し、亜細亜堂を設立
  • 1979年:「がんばれ!!タブチくん!!」で初の劇場用作品の監督を務める
  • 1983年〜2004年:「ドラえもん」の映画版で第4作から第25作までの22作で監督を務める
  • 2007年:「まじめにふまじめ かいけつゾロリ」の総監督を務める
  • 2012年:平成24年度文化庁映画賞を受賞

[ 錚々たる作品 ]

上記期間に芝山さんが関わったテレビアニメ、劇場アニメは膨大な数に及び、ざっと挙げただけでも「オバケのQ太郎」「パーマン」「巨人の星」「ムーミン」「天才バカボン」「ど根性ガエル」「まんが日本昔ばなし」「ちびまる子ちゃん」「忍たま乱太郎」「ドラえもん」「ルパン三世のパイロット版(キャラクターデザイン)」など、錚々たる作品ばかりです。

[ 芝山さんの作風 ]

芝山さんの作風・特徴としてよく言われているのは、綿密な時間計算、大変に細かい絵で描かれた繊細な絵コンテだとのことです。私も実際にこの目で本物の絵コンテを拝見しましたが、なるほど実写の映画と違い、アニメの絵コンテとはこういうものなのかと初めて知りました。事実、芝山さんご本人もご自身の繊細な描画力には自信を持っていらっしゃるようで、この部分では宮崎駿氏より自分のほうが上だと遠慮がちに話されていました。

[ 芝山さんの代表作「ドラえもん」から1本選ぶとすれば… ]

劇場用に22作品も監督された「ドラえもん」シリーズが芝山さんの代表作ですが、その中でも強いて1本を選ぶとすると「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」がご自身の最高作だとおっしゃってました。「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」は現在こちらの YouTube で鑑賞が可能です。よろしかったら。ちなみに同じくらい「ドラえもん のび太の日本誕生」もオススメとのことです。

[ 春高生からはたくさんの質問が ]

静止画スライドやDVDでの代表作の映写など、芝山さんの作り出した世界を十分理解したのち、春高生から次々に質問が続きました。芝山さんはそのすべてに真剣に、そして若干のユーモラスも交えながらお答えになられ、とても楽しい雰囲気の中、予定の時間が経っていきました。その後、スタッフから芝山さんへ感謝のお花が贈呈され、恒例の応援指導部リードの下での校歌斉唱が行われ、今年の春高祭オープニングセレモニーが成功裏に終了いたしました。

[ 最後にU君のことを書かねばなりません ]

芝山さんの後ろにそっと立つ上田君

芝山さんの後ろにそっと立つU君

講演の開始前から開始後まで、もっと正確に言えば芝山さんが八木崎駅へ着いてから八木崎駅を去るまで、一人の春高生がまさに影武者のようにぴったりと寄り添っていました。彼こそが、「講演は私の仕事ではない」と頑なに断ってきた芝山さんを1年かけて口説き落とし、今日のこの日を実現させた功労者、小さい頃から芝山アニメの大ファンだった春高祭広報委員のU君です。私は芝山さんにぞっこんになりましたが、このU君にも目を見張りました。逸材です。私は彼に私の名刺を渡し、「卒業後にはぜひ同窓会を頼むね」と、心からのラブコールを送ったことは言うまでもありません。